金融商品取引業(不動産投資運用業)

コンダクトリスクとは?→金融商品取引業者・不動産投資運用業の目線から

コンダクトリスク(広義のコンプライアンスリスク)について、まとめています。

コンダクトリスクとは?

コンダクトリスク(広義のコンプライアンスリスクを指す)については、業界における共通理解が形成されている状況にはありません。各国の金融当局は明確に定義することに消極的であり論者によって内容が異なる状況です。

しかし共通項はある程度明確になっており、「リスク管理の枠組みにおいて、把握されていない(いわば盲点)となっているリスク」を指すものと理解されることが多いです。

そのようなリスクは、明文の法令で規制されていないものの、以下の行為に繋がり、結果として企業価値が大きく損なわれることが多いです。

  1. 社会規範に反する行為
  2. 商慣習や市場慣行に反する行為
  3. 利用者視点を欠如した行為

そして、

コンダクトリスクを類型化すると、以下の類型が分けることが可能です。すなわち、コンダクトリスクは金融機関に対する社会の期待等に応えられなかった場合に顕在化するリスクのことを新しい言葉で言い換えているに過ぎないと考えることもできます。

  • 利用者保護に悪影響を与える場合
  • 市場の公正・透明性に悪影響を与える場合
  • 企業の風評(レピュテーション)に悪影響が生じる場合
    自社において直接損失は生じないものの、利用者などの外部のステークホルダーに損失が発生する場合

コンダクトリスクに該当するか否かの判断基準としては、以下の項目を挙げることが一般的に可能です。

  • 役職員・外部委託先の行動(法令違反に限られない)
  • 期待水準(法令上の基準→顧客・社会の期待水準)
  • 結果発生
  • 損害発生の可能性(私法上の損害、行政上の損害、レピューテーションの棄損)

コンダクトリスクの特定

各国の金融当局は明確に定義することに消極的な理由は、監督官庁は業者自らが自己のビジネスにおけるコンダクトリスクを特定するように監督したいから、と考えられています。

では、コンダクトリスクの特定はどのように実施すべきでしょうか。

コンダクトリスクを特定するためには、ビジネスモデルをよく知る第1線が、第2線の協力の下で、自らのビジネスリスクを特定する必要があります。

しかし、第1線に自らのビジネスにおけるリスク事象を抽出してください、と指示したところでコンダクトリスクを特定できることは通常難しいはずです。

ですから、アンケート方式、ディスカッション、事例課題などを通じてリスクを特定すると良いでしょう。

<第1線とのコミュニケーション内容>

  • 所管業務において、比較的大きいと考えられるリスクと、そのリスクが顕在化するシナリオを◯個挙げてください
  • 所管業務において、リスクの大小を問わず、問題発見やモニタリングが困難と考えら得るリスクとその理由を◯個挙げてください。
  • 所管業務において、所管部署と他部署間で、どちらがリスク管理を行うべきか不明確な業務・リスクを挙げてください。
  • 所管業務に限らず、会社業務全般のうち、十分に特定(または言語化)できていないリスクや業務を挙げてください。
  • 当社の3線管理の現状において、不十分と感じる点を記載してください。

以下が、不動産投資運用業におけるコンダクトリスクの一般例です。

  • スポンサーや関係者との取引における利益相反状況の看過
  • 投資家への開示における不適切な省略・不適切な表示
  • 潜脱的な社内プロセスの省略(不明確な社内規程の解釈を利用した社内規程違反からの潜脱)
  • 顧客からの苦情等に対する不適切な対応、時期を逸した対応
  • 一部の投資家の利益を優遇するために他方の投資家の利益を不適切に切り捨てる行為
  • 期限の不適切な設定による時間的プレッシャーを利用した不適切な対応
  • 目標の不適切な設定による収益等へのプレッシャーを利用した不適切な対応
  • 他の役職員の不適切な行為の意図的な看過
  • 外部委託際による不適切な行為の意図的な看過
  • 言葉の言い換えによる不適切な行為の看過(賄賂と奨励金など)
  • その他

 

<コンダクトリスクのまとめ→参考資料>

「ARES研修資料(2024年2月20日:不動産投資運用業におけるコンダクトリスク管理の進化と実践-長嶋大野常松法律事務所梅澤弁護士」
「コンプライアンス・リスク管理基本方針」